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常に攻めるエンジニア組織であるために|取締役 開発本部長 惠良和隆

2022年9月、リリースから2周年を迎えたタクシーアプリ『GO』。

「どうする?GOする!」で話題のTVCMも絶好調。2022年9月には1000万ダウンロードを突破し、サービス提供エリアを日本全国へと拡大しています。

withコロナの状況下で、タクシーアプリとしては日本を代表する規模まで成長してきた『GO』ですが、リリースからの2年間はいくつもの壁に行く手を阻まれてきました。

「実は、リリース時点から結構な綱渡りだったんですよ(笑)」

そう明かしてくれたのは、取締役・開発本部長の惠良(えら)和隆。DeNAのMOV/DRIVE CHART事業とJapanTaxiが事業統合したMobility Technologies(MoT)において、それまでライバル関係だったエンジニアたちが力を合わせて、ひとつのサービスをリリースするまでにどのようなストーリーがあったのか。
そして、彼らはいかに『GO』と向き合っているのか。


綱渡りで辿り着いたリリースまでの道のり

ーまず「綱渡りだった」とは、どういうことでしょうか。

惠良:リリースのインパクトと開発スケジュールのバランスを取ることが非常に難しかったんです。

統合して新たにアプリをリリースすることは決まっていたのですが、あまりもたついていると競合が勢いづく可能性はあったので、隙は見せられない。スピード感を持ってリリースすることが求められていたのですが、新機能のひとつでも実装されていないと「名前が変わっただけじゃん」と思われかねません。

当時の会議で社長の中島から「なんとか新機能できないの?」とリクエストされていましたが、開発には当然時間がかかります。当初は私も「無理なものは無理です」と説明していたのですが、リリースのインパクトを出したい気持ちも痛いほどよくわかる。

「やるなら5ヶ月間かけて統合アプリをリリースし、その後段階的に新機能を追加リリースするのはどうか」と提案しました。「ただし、もし間に合わなさそうだったら初期リリースは延期させたい」という選択肢も含めて意思決定を得られたので、私が手を動かすことも視野に入れつつ、覚悟を決めて9月のリリースが決まりました。

とはいえ、もし何かトラブルが起きたら簡単にひっくり返ってしまうスケジュールだったので、かなり綱渡りだったように思います。

ー統合直後のエンジニア組織でパフォーマンスを発揮してもらうためにはどのようなマネジメントを?

惠良:結論としては「信じる」しかありませんでした。私はDeNA出身なので同僚だったメンバーの能力は把握できていますが、JapanTaxi出身のメンバーまではカバーできていない。かなり手探りな状況下で、ギリギリでスケジュールを組むわけですから、それだけでも結構なギャンブル要素はあります。
しかし、元を辿ればライバル関係にあったようなメンバーたちですから、そこまでスピード感がズレることもないだろうし、共通言語もある。だから「できる限りの全精力を注いでほしい」とメンバーを信じました。

ーエンジニアが最大限のパフォーマンスを発揮するために気をつけたことはありますか。

惠良:情報共有は徹底しました。お互い自分が携わってきたシステムのことは知っていても、システム統合したあとのことは誰も知らないので、開発していても「これ、どうなってます?」みたいなことがボコボコと出てくるんですよ。

「何かしらの課題に対して一部の人しか知らない」みたいな状態をつくってしまうと、他の部分でも影響が出る可能性があったので、開発のコアメンバーを集めてアップデートされた情報をこまめに共有していました。メンバー間でも「情報格差があると遅れが出たとき取り戻せなくなるから」と自発的に動いてくれていたようです。ですから、私が気をつけたというよりも、みんなが頑張ってくれた結果が9月リリースにつながったのではないでしょうか。

ーライバル関係であったからこそ、一人ひとりが対話を大事にしようとしたのでしょうか。

惠良:うーん、どうなんでしょうね(笑)。目指すゴール、取り組むべき課題が明確だったからこそ、今までの関係にとらわれず「さぁ、これからどうしましょうか」と未来志向で議論を重ねられたと思います。

『GO』リリース2周年を迎えた現在地

ーリリースから2年が経ち、ご自身の手応えとして満足度はどのくらいですか。

惠良:正直なところ、納得できるレベルにまでは全く達していないです。満足度で言うと50%ぐらいですね。

2年前はもっといろいろ整理されている未来予想図を描いていたのですが、志半ばのところもいくつも残っているので。もちろん新しい機能なども実装されてきていますが、100%に達するにはまだまだ時間がかかりそうです。

その背景には、想定外の課題が出てきたり、リソース不足が重なったり……が積み重なっていることがあるので、「できたのにやらなかった」ではなく「本来であればできたけど諸事情でできなかった」という認識ですね。

想定外といえばコロナもそうですよね。コロナが流行り出したタイミングで『GO』をリリースして、その後も予測不能な状態が2年間続いているんですよ。たとえばタクシーの乗務員さんが退職して供給が15%近く減ってしまって。『GO』をリリースしたタイミングでは「落ち着いたらまた戻ってきてくれるでしょ」とある種楽観的に捉えていたのですが、実際はすぐに戻ってこないし、コロナは全く落ち着かないし……。

私たちだけが直面している課題でないことは重々承知していますが、これからますます予測不能な時代が続く気配はありますよね。

ーとはいえ、コロナ禍でこれだけサービスを伸ばせた要因は。

惠良:何かひとつ「この施策が効いた」ということではないと思います。

TVCMもそうですし、サービスの品質改善なども含めて、全員が努力した結果です。コロナ禍でこれだけのペースでユーザー数や実車数を増やせたことを、メンバーたちには誇りに思ってほしいですね。

ーこれから『GO』が目指す世界は。

惠良:世の中にある無数の課題を解決していくことです。

たとえば、「地震や大雪などで電車が止まってしまったときに、GOを使ってタクシーを呼んで帰宅できた」みたいな話はチラホラ聞きますが、タクシー乗り場の列に並んでいる人すべてを助けるといったことは今のところはできていないわけで。災害時のクイックな対応などは事業を優先すると後回しにしがちですが、どこかのタイミングで時間をつくって、集中的に開発していく必要があると感じています。

エンジニアリングに“銀の弾丸”はないので、実証実験を繰り返しながら少しずつ前に進めていくしかないんですよね。新しい機能を足して、新しい利用シーンを創出して、細かな課題を少しずつ解決していきたいと思います。

エンジニアには余力が必要だ

ー対エンジニアのマネジメントで気をつけていることは。

惠良:何か決め事があるわけではないのですが、エンジニアとしてやりがいのある環境をつくっていきたいと常々思っています。むしろ、仕事はやりがいがなければ、意味がない。

様々な課題に向き合いながら仕事を進めていく中で、誰もが一朝一夕で仕事をポジティブに捉えることはできないから、雰囲気づくり含めて「もっといい方法はない?」とメンバーに投げかけるようにしています。自分たちで考えたアイデアの方がモチベーション高く取り組めるので、トップダウンで物事を決めたくない。課題は投げかけるけど、解決方法はメンバーレベルで試行錯誤しながら考えてもらうようにしています。トップダウンだと考え方も守りに入って、疲弊してしまいますからね。

ー言葉に重みを感じます……!

惠良:そうですか(笑)。以前ゲーム開発に携わっていたころ、本当に忙しくて、「リリース1ヶ月前は泊まり込むのが当たり前」みたいな生活を送っていました。

1ヶ月忙しいだけならまだいいんですが、開発規模がどんどん大きくなって、繁忙期が年単位になると、さすがにメンタルが保てなくなっていって。思考もその場しのぎになっていって、先々のことを考えられなくなってしまいました。
あくまでも当時の働き方ですが、やはり一定の余力は必要です。余力があるからこそ、新しくチャレンジできる。やはり攻める部分がないとエンジニアリングは楽しくないですからね。

日常生活で利用するようなITサービスは、以前のパッケージ売り切りの家庭用ゲームとは違うので、「リリースして終わり」ではなく継続的にブラッシュアップしていく必要があります。逆の言い方をすると、ドラスティックな変化が起きにくいからこそ、自分たちで働き方をデザインし、日々やりがいを感じられる体制や文化をつくっていくべきだと思います。

一度負の方向に回ってしまうと、逆回転させるのは相当のパワーを要するので、エンジニアのやりがいづくりにはかなり力を注いできました。

たとえば、会社や事業にある程度大きなインパクトを与えられるアクションに関しては、私が主導しています。エンジニアのスキルアップを促進するために、通常業務から2週間離れて新たな知識や技術の習得に充てられる取り組み『Engineer Challenge Week』がわかりやすい例です。

MoTエンジニア組織の未来

ーMoTのエンジニア組織の特徴は。

惠良:手前味噌ですが、優秀なメンバーが揃っている自負はあります。MoTの4つのバリューの中に「コトに向かって走れ。」という言葉がありますが、MoTのエンジニアは「How」ではなく「Why」にこだわれるので、「なぜ今この機能を開発するのか」と本質を理解したうえでエンジニアリングに取り組める。ビジネスサイドとのコミュニケーションもスムーズです。

優秀なエンジニアたちが向き合っているのは、エンジニアリングの領域だけではありません。ビジネスサイドやプロダクトマネージャーと円滑なコミュニケーションを取りながら、「どんな課題を解決するサービスなのか」を考えながら開発に取り組める点が、MoTで活躍するエンジニアの最大の特徴だと言えるでしょう。

ー今後組織をどうしていきたいと思っていますか。

惠良:ビジネスサイドの優先順位に合わせて、柔軟に判断していくことになりますが、基本的にはプロダクトの品質を上げていきたいと考えています。

並行して「地味だけど、この部分が改善されるとよくなる」みたいなところがたくさん残っているので、コツコツと取り返していきたいですね。ここで見過ごしてしまうと、中途半端な機能がたくさんついているけど、いまいち使い勝手が良くないアプリになってしまうので。ちゃんと「かゆいところに手が届くアプリ」に育て上げていきたいと思います。

組織としては、3つ。1つは、やりたいことを実現できる規模へと成長させていくことです。単純に人数を増やすのではなく、つくりたいプロダクトを高いクオリティで開発できるように採用や育成を通じて、エンジニアの質を一層高めたいと考えています。

2つ目は、ワークライフバランスを大事にすること。1つ目でお話ししたエンジニアの質につながる部分でもあります。最近、お子さんが生まれて育休を取得する男性社員が増えてきているのですが、人数が少ないとちょっと後ろめたい気分になってしまうので……胸を張って育休を取得してもらうためにも余力を持たせたいと思います。社員のライフイベントを全力で受け止められる組織にしていきたいですね。

最後は、開発スピードの向上です。たとえば、今1ヶ月で開発できているものを来年3週間でつくれるようになれたら、できることはさらに増える。残業時間も減って、プライベートの時間もたっぷり確保できるようになるはずです。空いた時間で家族と向き合うもよし、新しいチャレンジをするもよし。いずれも仕事に好影響をもたらすはずです。

ご紹介した3つは「どれか1つクリアしていればいい」というものではなく、いずれもクリアしていくべき課題ですし、すべてつながっています。妥協せずに取り組み、組織のレベルアップにつなげていきます。

ー最後にその中で惠良さんが担う役割とは。

惠良:その時々で、MoTや『GO』においてベストな形で関わっていきたいですね。本当に必要なことをやって、MoTに貢献していきたいと思います。


採用情報
Mobility Technologiesでは、共に働くエンジニアを積極的に採用しています。


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