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“優しいテクノロジー”でタクシー乗務員を支援 ――売上を安定させ、柔軟な働き方の礎をつくる「お客様探索ナビ」

タクシー車両から収集した移動データをもとに、乗務員業務をサポートするために開発されたサービスが「お客様探索ナビ」です。

AIを活用してタクシーの需給予測を行い、カーナビゲーションのように乗務員をリアルタイムかつ個別にお客様の乗車が見込まれる通りまで誘導します。これにより、乗務員は効率的にお客様を探すことが可能になるのです。

「MOV」の一機能として開発された「お客様探索ナビ」は、Mobility Technologies(MoT)でさらに磨かれ、乗務員の方々のフィードバックをもとに日々進化しています。

「お客様探索ナビ」をはじめ、乗務員業務を支援する様々な取り組みについて、乗務員営業支援事業のサービスマネージャーを務める山本英幸に聞きました。

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乗務員の仕事を支えるAIで、タクシー乗務員の裾野を広げる

――MoTが「お客様探索ナビ」提供を通じて目指す世界を教えてください。

一言でいえば、「未経験者でも安心してタクシー乗務員になれる世界」です。

MoTにおける現在の事業はもちろん、目指している未来においても、タクシーは欠かせない存在です。しかし現在、タクシー業界では、コロナ禍による売上の減少や、乗務員の不足が大きな課題となっています。

タクシー乗務員の多くは歩合制で雇用契約を結んでいるため、特に都市部では、流し営業でお客様を乗せられないと収入が大きく減ってしまいます。また、未経験から始める新人乗務員は、当然、ベテラン乗務員のようなノウハウを持っていません。しかし、一定の研修を終えた段階ですぐに営業を始めなければならず、歩合制というプレッシャーもあって、退職してしまう方もいらっしゃるのです。

――そうした課題を解決するために生み出したのが、「お客様探索ナビ」ですね?

はい、「お客様探索ナビ」は単にエリアの需要予測をするだけではなく、他のタクシーの供給量も加味しながら道路レベルで最適な経路を推薦することで、新人乗務員の方でも使いやすいシステムにしています。

そのため、道に慣れない新人の方でもすぐに売上を伸ばすことが期待でき、歩合制でも安心して働くことができます。また、新人乗務員の働き方が改善されることにより、タクシー事業者様における乗務員の新規採用にも寄与できると考えています。

――すでに効果が出ているのでしょうか?

東京大学と共同で実施した効果測定で、「お客様探索ナビ」を利用している乗務員と利用していない乗務員の乗客を発見するまでにかかる時間を比較しました。その結果、ナビを使った乗務員の方が、明らかに効率的に乗客獲得できていることが分かっています。

また、MoTではタクシー乗務員の採用をサポートする「乗務員採用支援事業」を行っていますが、「お客様探索ナビ」は、タクシー乗務員という仕事に興味を持っていただくきっかけの一つにもなっていると実感しています。

従来、タクシー乗務員に転職される方は「若くても40代」という特徴がありますが、我々が開催した採用イベントでは、より若い20〜30代の方にもご参加いただくことができました。「お客様探索ナビ」があることによって、タクシー乗務員は道に詳しくないとできない仕事、というこれまでの常識を覆すアプローチができるようになったからだと思います。

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「優しい当たり前」をつくり、タクシー業界に新たな力を取り入れていく

――乗務員営業支援事業では、「お客様探索ナビ」以外の取り組みも行っていますね。

乗務員営業支援事業は、未経験の方々にもタクシー業界に興味を持っていただけるよう、“優しいテクノロジー”を標語にして事業を推し進めています。具体的には、MoTのテクノロジーを駆使して、「交通不全の解消」や「タクシー乗務員の売上向上」など、タクシー業界を活性化する事業を展開しているんです。

現在商用化しているのは「お客様探索ナビ」だけですが、他にも乗務員の方々に役立てていただける様々なサービスを計画しています。

その一つは、乗務員の働き方をフォローアップし、どのように改善するかを管理者と検討できるようにするモニタリングシステムです。現在、商用化に向けて実証実験も進んでいます。

「お客様探索ナビ」によって、タクシー乗務員の売上を安定させられれば全て解決、とは考えていません。タクシー乗務員をより魅力的な職業にするには、「働きやすさ」もこれまで以上に良くする必要があります。

――タクシー乗務員の働き方は、不規則そうなイメージもありますね。

タクシー乗務員は隔日勤務で、「1日で2日分働く」ようなワークスタイルが一般的です。ある意味でフレキシブルな働き方と言えますが、一方で、フルタイムで働くのが難しい方など、誰にでも働きやすい環境ではありませんよね。

世の中の「移動」が変化するのに合わせて、多様な働き方も用意できれば、タクシー業界はもっと活性化できると思っています。例えば、学生や主婦・主夫が働きやすいよう、1日4~5時間程度、固定給で働けるというものです。また、タクシー業界には、乗務員として入社したのち、業務に慣れるまでは固定給で働き、その後に歩合給に移行する仕組み(給与保証期間)が既にありますが、この仕組みをより進化させるための検討も行っています。

現在、タクシー乗務員の平均年齢は約60歳です。変化は痛みを伴うものですし、すでにタクシー業界で働かれている全ての人が変化を望んでいるわけではありません。

我々は、こうした考えをタクシー業界の方々に押し付けるのではなく、あくまでも、新しくタクシー業界に入ってくる方々に向けて、“優しい当たり前”をつくっていきたいと思っています。

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主役はタクシー乗務員、テクノロジーを適切に用いて業界を変革する

――山本さんがタクシーやモビリティ領域に関心を持ったきっかけを教えてください。

遡れば、あるメーカー企業で働いていた頃、海外赴任先のシンガポールでのタクシー乗車体験がきっかけですね。

シンガポールでは車の保有に制限があるため、タクシーが有効活用されています。当時は「GO」のようなタクシーアプリはありませんでしたが、SMSで郵便番号を入力することで、タクシーが数分で迎えにきてくれる仕組みがありました。

日本では郵便番号で一地点を特定できないため同様のサービスが普及するのは難しいかと思っていましたが、「JapanTaxi」アプリや「MOV」の登場や、MaaSというキーワードも社会的に広がりつつあるのを見て、ITと交通インフラが連携して蓄積したデータを活かし、より良い社会をつくっていくフェーズに差し掛かっていることを強く実感しましたね。

シンガポールでの経験から、タクシーアプリに代表される交通デジタルサービスが社会に定着すべきだと考えていたこともあり、私は旧DeNAオートモーティブで「MOV」に携わるようになったんです。

――最後に、山本さんのご経験を踏まえた、MoTで活躍できる人物像を教えてください。

タクシー業界の主役は、タクシー事業者様であり、タクシー乗務員の方々です。MoTはテクノロジーでタクシー業界のDXを進めていますが、ただテクノロジーを活用すればいい、というわけではありません。

事業の検証フェーズや立ち上げフェーズにおいて、本質的な価値を見極めるためにお客様と真摯に向き合い、検証結果に応じて日々刻々と変わる事業の方向性に柔軟に対応する能力が求められます。これは技術サイド・ビジネスサイドを問わず、どのメンバーにも不可欠な能力と言えますね。

ビジネスサイドにおいては、計画案を作って自社だけで進めるのではなく、お客様であるタクシー事業者様と共に進めていく必要があります。そのため、お客様の話を聞きながら計画案を修正して、理解を得ながら、タクシー業界とMoTの双方に意義のある取り組みを実現させられる力が必要です。

また、「お客様探索ナビ」などタクシー業務に深く踏み込んだサービスの場合、ユーザーであるタクシー乗務員の方々の思いを理解していなければ、最も大切な信頼関係を損ねる恐れもあります。テクノロジーはあくまでも手段です。使い方によって、毒にもなるし薬にもなる。その前提を持ち、高い理想と現場の温度感を両輪で大切にできる感覚を持っている方であれば、MoTで活躍できるのではないでしょうか。

うれしいです!
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「移動で人を幸せに。」をミッションに掲げる会社Mobility Technologies(通称MoT:エムオーティー)の公式note。 MoTの人・組織・事業・日々の出来事などを発信します。https://mo-t.com/