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「GO」で真のDXを実現したい|執行役員/プロダクト開発本部 本部長 黒澤隆由

2022年9月、タクシーアプリ「GO」はリリースから2周年を迎えました。

TVCMも絶好調で、ダウンロード数は1000万を突破。日本を代表するアプリのひとつに数えられるまでになりましたが、その道のりにはさまざまなチャレンジがありました。

DeNAに入社し、「タクベル」から「MOV」へのリブランディング、JapanTaxiとの事業統合によるMobility Technologies(以下、MoT)の誕生、そして「GO」リリースと、タクシーアプリの一時代を描いてきたキーマン、執行役員/プロダクト開発本部 本部長の黒澤隆由が、その過程を語ります。

彼が「GO」に託した想い、そして「GO」を通じて実現したい未来とは。


タクシーアプリには残りの人生をかけるだけの可能性があった

本題に入る前に、MoTで働くことになった経緯を教えてください。

黒澤:少し仰々しい言い方になりますが、残りの人生をかけられる事業やプロダクト開発に向き合いたくなったからです。

前職でもITサービスやプロダクトの開発を通じて多くの人の生活を豊かで快適なものに変えていけるよう取り組んでいました。10年あまり携わる中で事業もユーザー数も右肩上がりに急成長していきました。手前味噌ではありますが、国内トップレベルのプロダクトへと育てられましたし、業界のDXにも大きく貢献できた自負があります。

ただ、前職に入社してまる10年、11年目を迎えて、事業やプロダクトも次のステージへのチャレンジに突入していました。強固なユーザー基盤をベースにカスタマイズ性を持たせたり、レコメンデーション機能を拡充させたり、取扱商品を増やしたり……そんなタイミングで私自身の人生を考えたときに、「残りのキャリアをかけるに足るようなプロダクト開発に向き合いたい」という想いが強くなっていきました。

ーなぜモビリティの分野を選んだのでしょうか。

黒澤:「移動/モビリティ」の分野は、個人的な実体験からも特に課題感が強い分野だと感じていて、また移動を変革していくということは、単なるDXの枠を超えて、ITのチカラで多くの人のライフスタイルや都市のカタチまでも変革していける可能性に魅力を感じました。

実家のある街は、若い人たちの移住が増えて人口自体は増加傾向にあるけれど、まだまだ車社会。病院やスーパーへ行くにも車が必要な環境です。もしこのまま10年経って、両親が免許を返納したら、生活の術がなくなってしまう。もっとも身近で大切な人の未来を想像したときに「自らが関わることで課題解決に貢献できることもあるのではないか」と考えました。

移動したいタイミングで最適な移動手段を呼び出せるようになれば、地方の交通課題だけでなく、都市においても「駅の近くに住まなければならない」「時刻表に合わせて生活しなければならない」といった常識を覆せるかもしれないし、それはすなわち、多くの人のライフスタイルや都市のカタチを変革していくことにつながるわけです。

そんな想いから、「GO」の前身のひとつである「MOV」のさらに前身となる「タクベル」というタクシーアプリを開発していたDeNAに入社しました。当時はDeNAがプロダクトマネージャーの育成や組織づくりにも着手しようとしていたタイミングでもありましたので、なおさらこれまでの経験を活かしてお役に立てることがあるのではと考えました。

ー当時の「タクベル」についてもぜひ教えてください。

黒澤:当時の「タクベル」は、まさに「Minimum Viable Product(実用最小限の製品)」として市場にリリースされた直後でしたので、使ってくださるお客様と乗務員様を「迷わせない」「不安にさせない」「新たなペインを生まない」という観点から、最低限のUXを担保する開発が急務な状況でした。そのためのPRDを必死になっていくつも書いた記憶があります。

まもなくして「MOV」へのリブランディング検討もスタートしたため、デザイン検討にも深く入り込んでリブランディングを実現しました。これが現在の「GO」のベースになっており、多くの方々に愛されるプロダクトとして、いまも進化し続けられていることを思うと、とても感慨深いです。

なお、のちに統合することになる「JapanTaxi」(旧「全国タクシー」)の存在は非常に大きかったですね。タクシーアプリの先駆者として前を走っていたので、追いつけ追い越せでたくさんのことを参考にさせてもらいました。

リリースに向けてプロダクト責任者の行く手を阻んだ大きな壁

ーそして2020年に事業統合、「GO」の誕生など、立て続けに大きな変化がありました。プロダクトの責任者として乗り越えるべき壁も多かったように思います。

黒澤:そうですね。「JapanTaxi」と「MOV」のどちらのシステムをベースに「GO」の開発を進めるか、1stリリースのタイミング、その際にどこまでの機能要件をマストにするか、といった主要論点について提案をまとめて、経営メンバー間のコンセンサスを醸成していくかたちで進めました。

2020年4月1日に事業統合したのですが、一週間後に緊急事態宣言が発出。JapanTaxiとDeNAのライバル同士がせっかく一緒になれたのに、対面で会えないという極めて特殊な状況での船出を迎えました。

特に印象に残っているのは、1stリリースのタイミングに関する意思決定ですね。当初はAI予約や優先パスといった統合アプリの強みとなるような新機能をしっかり実装した上で、2020年11月のリリースを提案していました。最終的には統合アプリのリリースを「事業統合の旗印」と位置付けて、そうした新機能実装は次のフェーズにまわすことで、2ヶ月前倒して2020年9月1日にリリースターゲットを設定しました。

僕自身、「事業統合の旗印」という言葉を真摯に受け止めて、プレッシャーもありました。「ここでコケるわけにはいかない」と(笑)。
ただ、当時から「GO」の開発に関わるすべてのメンバーがそれぞれのバックグラウンドにとらわれず、しっかりコトに向かっていて、高い専門性と自走力を持って取り組んでいたので、必ずやり切れるという確信もありました。9月1日に無事「GO」をリリースできたことは、まさに「事業統合の旗印」として、MoTにとって意義深いことだったと思います。

ーどのように乗り越えたのでしょうか。

黒澤:まず、両社のアプリ統合の要件定義をスムーズに進めるため、感染対策を行いながら、両社のプロダクトマネージャーとデザイナーを集めて食事会を開催して、お互いのアプリの機能の洗い出しから着手しました。
続けて、2回目は双方のエンジニアにも参加してもらって、お互いのシステムをそれぞれデモ紹介して、アプリ統合に際して考慮が必要な点の洗い出しにも着手しました。
 
事業統合直後の4月は、まだ多くのエンジニアが仕掛かり中の開発案件を抱えていましたが、5月のGW明けから合流する予定になっていたので、そこの部分の要件定義は後ろに回して、最後はプロダクトマネージャーがGWを返上して要件定義をやりきり、GW明けからものすごいスピードで開発が進んでいきました。

AI予約と優先パスも11月に無事リリースできました。ともに新たなアイディアで開発を行った機能でしたが、技術的なフィージビリティに不安はなく、むしろユーザーの皆さまに不安なく使っていただけるか、細かなUIの見せ方や伝え方、ベストな配車のタイミングなど、プロダクトとしてのトータル設計にチャレンジがありました。
 
もちろん、まだ解決すべき課題はあるものの、ディテールまで気を配ってプロダクト設計した結果、特にタクシーがつかまりにくいタイミングで利用いただけるような機能を提供開始できたことで、今後も「GO」はいいプロダクトに成長していくと確信が持てました。

DX=単なる業務効率化ではない

ーかなりハイエンドなエンジニアが集まっているとお見受けします。

黒澤:MoTには本当に優秀なエンジニアが多く集っていると思います。
自分の思い描いたものを着実に実現できる技術力をもつエンジニアと一緒に仕事ができるということは、本当に幸せというか、プロダクトマネージャー冥利に尽きますよね。本当はもっと対外的にアピールしていいんですが、MoTには奥ゆかしい人が多いので(笑)。

ー腕の確かなエンジニアが集まる理由についてはどのように考えていますか?

黒澤:MoTが掲げる「移動で人を幸せに。」というミッションへの共感だと思います。それぞれが自分ごととして捉え、課題感を持って向き合ってくれているから、コミットできている。

最近はトレンドワード的に「DX」という言葉があちらこちらに溢れています。オフラインだったものをデジタル化することで、コスト削減できたり、スムーズに回るようになったり、結果、モノやサービスの価格が下がったり。とても有意義で素晴らしい取り組みではあるのですが、私たちの目指すものは、単なるDXの枠を超えて「移動のインフラを変えていくこと」だと考えています。

ーMoTが実現するDXについてもう少し詳しく教えてください。

黒澤:個人的な見解や想いを多く含んでしまいますが、ユーザーが『どこかへ行きたい』と思ったときに真っ先に想起される移動ポータルとして、それぞれの状況やニーズに応じて最適な移動手段をお届けできるオンデマンド移動プラットフォームでありたいと考えています。
それは今後、他のお客様との相乗りの車両であったり、自動運転車両であったり、シェアリングされた車両であったり、短距離であればバイクシェアもよいかもしれません。

さらに「GO」がネットワークしているタクシー車両がEV化していけば、「GO」を利用すればするほどCO2削減にも貢献できる。「GO」を利用すればするほど、日々の生活の移動が便利に快適になって、人にも優しくなれるし、環境にも優しくなれるわけです。
「GO」は、今までの生活圏が小さく感じるほどに移動を便利に快適に、そしてフレンドリーなものにしてくれるものであって欲しいと考えています。

ー業界の効率化だけではなく、社会や人々の暮らしにフォーカスしたプロダクトですね。

黒澤:そうですね。コロナ禍で移動そのものが大きく制限されました。でも、だからこそ移動して人と会うことのエンターテインメント性の高さや大切さを再認識できた気がします。エンターテインメントの原点でもある移動をアップデートしていくことが使命だと考えると、とてもワクワクしますよね。

新たなスタートラインに立って見えた世界

ー今後追いかけていく目標について教えてください。

黒澤:先ほども少し触れましたが、さまざまな移動シーンにおいて、オンデマンドに利用できる移動の選択肢を増やしていくことだと考えています。特にユーザーの裾野を広げる、新しい市場を作るという観点で、相乗りや乗り合いみたいなものには個人的にもチャレンジしていきたい想いがあります。

他の人と乗車料金を負担し合えるようにすることで、これまで日常生活においてタクシーを気軽に利用してこなかった方々にも利用いただける機会を増やしていけると嬉しいです。

また、相乗りや乗り合いは都市部での利用に限らず、地方へのさまざまな展開の可能性も拓ける取り組みでもあります。それぞれの地域の生活の足として根付くことができれば、車がないと生活できないような地域でも快適に生活できる、高齢者の方も安心して免許を返納できるかもしれませんよね。

相乗りの肝はユーザーの効率的なマッチングです。そのためのユーザー基盤とマッチング技術を併せ持つプレイヤーは限られています。そんなチャレンジができるポジションとアセットを手にできていることは、本当に幸せなことだと思います。

ー今後黒澤さんが担っていく役割とは。

黒澤:大きく2つあります。

1つは、これまでと変わらずプロダクト責任者としての役割です。プロダクト開発には常に複雑な要素が絡み合います。そんな中で、なにを取捨選択していくのかという判断であったり、どういうプロダクトアイデアで課題を正しく解決して、それを最終的にどういうカタチに落とし込むのかというディテールにこだわることまで含めて、求められる重要な役割だと考えています。

もう1つは、今回のようにプロダクトへの想いやビジョンを語っていくことだと思います。こうした発信を続けることで、少しでも多くの方に、MoTや、MoTの提供するサービスやプロダクトへの理解や関心を深めていただけたら幸せですね。


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